ハヤカワ五味ファッションショー『RPG』のお手伝いに行ってきたよ

 


女子大生デザイナーハヤカワ五味による異次元ファッションショー@渋谷 - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

http://hayakawagomi.com/rpg/ 

に、少しだけお邪魔させてもらってきた。のでその体験レポートを書こうと思う。一応公開しているが個人用のメモということで。最初に行っておくよ。むっちゃ長いよ。

 

最近懇意にしているクラスメートの稲勝ことハヤカワがなにやらファッションショーをやるようなのでお手伝いがてら舞台裏に潜入してきた。お手伝いといっても当日人の足りないところにちょっと入る軽いなんでも屋をしてきただけである。スタッフさんやらモデルさんやらのわたしへの『なんだこいつ』感すごかったが個人的にはとても楽しめた。ハヤカワTシャツ着てなきゃ本当に部外者そのものだった。割と怪訝そうな視線がすごかったがまじで誰でもないから自己紹介のしようもなかった。ただハヤカワと同じ美大に通ってる特になんの取り柄もない一階のアイドルオタクだ。だがドルオタならドルオタらしく現場レポートを書くことにした。このエントリーを読んでくれる何人がジャニヲタの現場レポを読んだことがあるのかなんて皆目わからないが、かなり偏りある個人の主観で語られる”感想”であることをご理解いただきたい。あとそんなに裏話はない、ほんとにただの体験レポ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと5分でリハーサル始められますか」

 

わたしが会場に着いた時にはもうまさにリハーサルが始まろうとしている時だった。前日にポスター印刷を頼まれていたので超印刷のしょぼいぺらぺらのポスターを携えてハヤカワに挨拶をする。「おはよー。ポスターありがとー」と言うハヤカワは忙しくキビキビと動いていた。

「ハヤカワさんこれどうします?」「五味ちゃんここはこっちのタイミングでいいの?」「ハヤカワさんモデルさんの方は大丈夫?」「ハヤカワさん」「ハヤカワさん」「ハヤカワさんここって…」

すべてはハヤカワ五味というひとりのプロデューサーの判断、指揮のすべては彼女にあった、と感じた。実際はTehuさんやひゃっほーさんを始めいろんな人が各々指示を出して連携していたのだろう。しかしわたしはそのとき、会場に入った瞬間ものすごいパワーをハヤカワから感じた。

そもそも正直な話わたしは学校でのハヤカワしか知らない。学校でハヤカワと話すことと言ったってこれといって大した話はしていない。くだらない、ふざけた話ばかりだ。たまに食べに行く夜ご飯で真面目にデザイン論や将来について語り合うことはあれど、普段のそれは全くと言って一般的な女子大生の会話と変わらないだろう。

だからこそ、人数のいるチームをまとめ、いろんな方面へ気を配り、声を張り、忙しなく動き回る彼女が新鮮でたまらなかった。というか稲勝がハヤカワハヤカワ呼ばれてることがまず変な感じする。ここで忙しそうにしてるのは普段の『女子大生・稲勝栞』ではない、『ハヤカワ五味』なんだなあとひしひしと感じ、そしてなぜか心踊った。友達の新鮮な一面、SNSで動向を追ってるデザイナーの本番前、パトロンとして支援したクリエイターへの期待。”ここはクリエイションの現場なんだ”そう思わせるには十分な”現場感”があった。

調整を加えながらもリハーサルは進む。公演中、幕間の黒子の仕事があったわたしは一旦舞台袖に入った。モデルさんたちはとてもリラックスしているようで段取りやメイクの確認をしながら楽しそうに談笑していた。わたしは逆に緊張した。SNSで見たことある顔顔顔。前から大好きなモデルさんもいた。信じられないくらい顔の小さいモデルさん、何頭身あるのかすらわからない長い手足のモデルさん、色白で衣装のよく似合ったモデルさん、柔らかい雰囲気を醸し出しているモデルさん。美しい女の子・男の子で埋め尽くされた狭い舞台袖はある種異様な空気で満たされ、且つそれはとても良い雰囲気だった。なんと言えばいいのかわからないが、ハヤカワを先頭に一つのものを作り上げている人たちなんだと思った。しかしどこか違和感があった。なんだろう、どこか疑問がある気がする。

 

なにか引っかかるものを感じながらもリハーサルは終わり、続いて通しリハも無事遂行。15分押しで開場となったライブハウス『渋谷GARRET』に期待が充満する。

わたしは入り口付近で名前が定まらないさん(馴れ馴れしくしてしまってすみません)とサコッティくん(同郷)とカタログ販売をしていた。

ベース音が体に響く音響はさすがのライブハウスだ。それだけでわくわくしない人はいない。

 

オープニングムービーが始まる。ここで私は舞台袖に引っ込むのだが、実はショーに先駆けてアトリエで稲勝に出来立てほやほやのムービー見せてもらってたから問題無い。しかしあの音響で見たかったな。

 

袖ではモデルさんが順にメイク直しをしていた。終わった人からパフォーマンスの確認をする。仲良く肩を並べてにこやかに確認する姿はわたしたち一般の10代20代と変わらない、普通の女の子のようだった(決定的な違いとして圧倒的に見た目が美しいのだが)。可愛らしく、他愛のない会話、小気味の良いノリは笑いを誘い、それはどこにでもある日常のようだった。

そこでわたしは気付いた。そうか、わたしが感じてた違和感はここにあったのか。

”普通”なのだ。いい意味で、親近感が湧いてしまうほどにみんな”普通”に振舞っているのだ。見た目が美しいこと、特別な衣装を着ていることを忘れてしまうくらい、私たちと同じだ。そんなはずはない。そう思うだろう。私だって思う。でもそうなのだ。だから違和感を覚えずにはいられなかったのだ。

しかしその”普通”を感じさせる彼女たちが、ひとたびステージに立てば、ランウェイを歩けば演者として纏うオーラが変わる。圧倒的に他とは違う、そこら辺になんているはずのない”モデル”になるのだ。

 

この感覚は、初めて稲勝に会った時に似ていた。一端のデザイナーを目指す身として大学入学以前から『ハヤカワ五味』の存在は知っていた。そして彼女が同大学同学科に入学することも知っていた。蓋を開けてみれば同じクラスで、いつの間にか仲良くなった。

『ハヤカワ五味ってどんな子なんだろう?』そう思って話しかけた稲勝は限りなく普通で、その普通さに逆に驚いた覚えがある。(もちろん『頭よさそうだなー』とか『可愛いなー』とか『声低いー』とか個性に関する感想はあったよ)わたしの今いる環境には、ぶっ飛んだ人なんてたくさんいる。ちょっと頭おかしいんじゃないの…?みたいな人だってその辺にいる。でもそういう人は、やはりこちらが想像もできないような視点から新しいものを生み出したりもする。そんな例は、日常茶飯事だ。しかしハヤカワは違う。あまりに普通で、親しみがあって、なのにやってることはものすごいのだ。

 

今回のショーだってそうだ。10代、20代前半の若いクリエイターたちが集まって作ったショーにしては、クオリティがぶっ飛んでいる。しかし作っている人たちは決してぶっ飛んでなどいない、常識も良識もある人たちばかりだ。(こんな得体の知れない女に「おつかれさまです」なんて微笑みかけてくれる)

そういう『ぶっ飛んでいない』という意味で”普通”な人たちがすごいものを作ることこそ、わたしは本当にすごいエネルギーがあるのではないかと思う。

 

 

無事一部を終え、軽く昼食をはさみながらも調整が続けられる。Tehu氏が一部を総評し『評価はAだ」と言った。「しかしハヤカワ五味としてはA++ないし、Sを目指さなければならない」と続けた。

よりよいものを、今あるものより、もっとすごいものを。『意識が高い』じゃ済まされない。

どうしたら見ている人に伝わるのか?何が楽しいのか?なにがわかりやすいのか?何が美しいのか?

すべてデザインの基本である。が、その細い配慮・意識の高さは学生のそれではないと感じた。

 

 

二部の幕が上がる。この時のハヤカワの表情はどうだったのだろう。わたしは入場案内をしていたため袖に入るタイミングを失い、残念ながら始まったその時 彼女のその表情を見ることができなかった。

9月から始まったこの企画の、いわゆるオーラスが走り出した瞬間の彼女は一体どんな気持ちだったのだろう。

 

私自身がデザインされてきた服達を通して、今度は私が誰かの《強くなりたい》という気持ちのために、その人自身をデザイン出来たらすごく嬉しいなって思います。

カタログ序文抜粋ーhttp://twishort.com/4xRgc

 

こんなコンセプトを掲げたイベントはその名の通り終始力強く、エネルギーに満ち、見る者に強烈に訴えかけた。

自作とは思えない映像、ランウェイを歩く錚々たるモデル、音響、グラフィック。個人的にはダンスパフォーマンスのあとの後半のパフォーマンスが最高にかっこいい。袖でメイク担当の吉岡氏(最高に気さくで素敵なかたでした!)と思わず「かっこいい…」と目を合わせてしまったほどだ。

 

 

稲勝は、真面目だ。ハヤカワとしての仕事などなにか特別な用事がない限り授業には必ず出る。そんなことは普通だという声が上がりそうだが、間近で見ていればそんなことは言えないはずだ。寝てないツイート(というかそもそもツイートしすぎて寝てるはずない)は彼女の十八番だが、課題に仕事に、本当に日々多忙に追われている。週5必修の一限は出る。講義は真面目に聞く。暇があれば仕事の連絡・構想・確認。課題は期限にクオリティを上げて提出する。

上でも記したが、私が知ってる彼女は学校生活を送る稲勝栞だけだ。それは彼女の約半分、もしかしたらそれ以下かもしれない。そんな私でも心配になる程働き続ける彼女がこの数ヶ月作り上げてきた”作品”がショーの終わりと同時に完成しようとしている。

 

舞台が暗転する。メインモデルの華歩さんがひとり楽しそうに服を掲げ、ショーは終幕した。

緊張の糸が切れる。リラックスしていたと思われた舞台袖も、この瞬間ばかりは堰を切ったように動いた。自然と拍手が起こる。

ハヤカワは泣いていた。

終わったんだあ、なんて声が誰かから聞こえた。ハヤカワだったかもしれない。違ったかもしれない。でもそう言っているように見えた。

 

失礼かもしれないがわたしはそれを見て『鬼の目にも涙』という言葉が浮かんでしまった。失礼なのはわかってる。ごめんって。でも浮かんでしまったのだ。

私の知ってる稲勝は、あまり感情の起伏が激しくない。いや、もしかしたら心のうちは激しく波打ってるのかもしれない。しかしあまりそれを表に出すことはない。その稲勝が、泣いている。そう考えると彼女がこの作品に打ち込んできた熱量の大きさを知った。涙もろい私も少しだけ視界が霞んだ。全然関わってないのにね。やっぱり人の気持ちを動かすデザインっていいなあと強く感じた。ハヤカワ五味にしかできないデザインが確実にそこにあったと思う。

 

 

 

かくしてショーは成功に終わり、設営のことは何にもわからない身なので半部外者は邪魔にならないように帰宅した。

 

こうやって書くと本当に邪魔しに行っただけのようだがポスター刷って案内やって舞台袖ドア係やってコントローラーばらまいてカタログ販売したよ!ちゃんと仕事してたよ!

 

なんでこんな半部外者が5000字を超えるレポートを書いてるかというと、それくらい心動かされるいいイベントにほんっっっっのちょっとでも関われたことを記しておきたかったからだ。あとは学校サイドの人間としてハヤカワファミリーを外から見た印象をなんとなく残したくなった。外からだからこそ見えるものってあるのかなと思ったので、それを私の記憶の中だけに留めておくなんて勿体なさすぎる。人は24時間後には7割がた忘れてしまうからな。ドルオタなのでイベントの記憶が薄れゆく感覚は痛いほど知っている。

 

しかし見たもの聞いたもの事実を覚えておきたいから書いたのではなく、今日この日の今の熱量を残しておきたくて、手っ取り早く一番慣れ親しんだ現場レポという形をとった。こんな長文を最後まで読んでくれた人に少しでもこの熱量が伝わればいいなと思っている。

 

きっと明日にはすごく恥ずかしくなってると思うがこの熱量を新鮮なまま密封保存しておきたいので勢いのまま残しておくことにする。

 

 

 

今日の総評としては、とりあえず可愛い女の子に囲まれてる稲勝まじ羨ましいと思いました。

 

おつかれさまです。